皆さんご存じの通り、日銀は12月19日〜20日の金融政策決定会合で、長期金利の変動許容幅の上限をこれまでの0.25%程度から0.50%程度に引き上げました。これは黒田総裁の就任直後の2013年から続けている大規模な金融緩和の修正であり、金融市場では事実上の利上げと受け止められました。
この決定を受けて12月20日のドル/円相場は、1ドル=137円台半から1ドル=130円半ばまで急激に円高が進行。さらに債券市場では、指標となる新発10年物国債の利回りが変動許容幅の上限水準まで上昇圧力がかかりました。
一方、株式市場では、輸出関連や不動産株を中心に幅広い銘柄が売られ、2万7300円辺りで推移していた日経平均株価は、一気に2万6400円水準まで売られました。
この流れは海外市場へも波及する格好となり、主要各国の長期金利上昇につながりました。
また、12月17日には「岸田政権は日本政府と日本銀行の役割を定めた共同声明を初めて改定する方針を固めた」と共同通信が報じました。岸田首相は2023年4月に就任する次期日銀総裁と協議するとの見方が出ていたため、市場参加者の間では、日銀の大規模な金融緩和の修正につながる可能性があるといった声が聞かれました。
その後、12月20日に松野官房長官が「そのような方針を固めた事実はない」と報道内容を否定しましたが、共同声明の改定に関する議論が政府サイドで浮上するなか、日銀はこれに先駆けて対応したと取ることもできるでしょう。また、今回の日銀の措置については、政府サイドが為替の円安を嫌がってプレッシャーをかけた可能性がある、との見方もされているようです。
ただ、今後も断続的な金融引き締めが進んでいく可能性は低いとの見方もあり、今回の株式市場の急ピッチの下落に対する自律反発の動きが次第に意識されてくる可能性は十分にあります。
また、為替市場でドル/円相場は、10月時点の1ドル=150円からの円安是正の流れによって、チャート上では52週移動平均線水準まで円高ドル安が進んだことで、テクニカル面で言えばいったんは修正の動きを見せてくることもあるでしょう。
とは言え、日銀による金融政策の正常化に向けた修正は、10年近く続いていた大規模緩和に対する「出口戦略」の第一歩とも考えられます。そのため、今後は緩和縮小の動きが本格化してくることも想定され、「市場の混乱は今回限り」といった楽観的な見方には向かいづらいと考えます。
そこで今回は、大規模緩和の出口戦略が進むなか、為替市場が円高ドル安へのトレンド転換に向かうと想定し、「円高メリット」銘柄に注目しました。
ニトリホールディングス(9843)は、家具やインテリア用品のなど幅広く生活用品を手掛ける企業で、「お、ねだん以上。」のキャッチフレーズのもと低価格戦略にこだわっています。足もとの業績を見ると、9月30日発表の2023年3月期・第2四半期では、営業利益が前年同期比10.9%減の690億円でした。対ドルで1円の円安は年間で約20億円の減益要因になると見られ、上期においては71億円ほど営業利益を押し下げる要因になりました。決算期変更のため変則決算になりますが、下期の円高基調により、実質的には連続増収増益が続くことが期待されます。株価は11月以降にリバウンド基調が強まり、1月につけた高値1万8255円が射程に入ってきました。
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大阪ガス(9532)は、急速な円安の進行により液化天然ガス(LNG)など都市ガスの原料が高騰しており、10月31日発表の2023年3月期・第2四半期では、営業損益が456億円(前年同期は399億円の黒字)の赤字に転落しました。これは8月に2023年3月期通期の想定為替レートを1ドル=115円から1ドル=133.6円に見直したことも影響しているようです。なぜなら、大阪ガスにとって、円安は海外の資源開発事業については増益要因になりますが、国内では仕入れ値の上昇につながるため、全体で見ると1円の円安が経常利益を5億4000万円ほど減少させる要因になるからです。なお、株価は6月の高値2616円をピークに切り下がる13週移動平均線に上値を抑えられる形での下落が続いています。しかし、足もとでは下値を切り上げてきており、13週移動平均線の突破を想定したリバウンド狙いの戦略となります。
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日清製粉グループ本社(2002)は、原材料価格の高騰や円安による食糧インフレの進行の事業環境へ与える影響が大きく、製品価格の相次ぐ価格改定によって需要減退のリスクがあります。穀物相場の動向は気がかりですが、円安が是正されることにより、これ以上の値上げに伴う需要減への不安は和らぐでしょう。株価は、3月の高値をピークとした緩やかな調整トレンドが継続。足もとで13週・26週移動平均線を突破してきており、今後は52週移動平均線の突破を睨んだリバウンド狙いのスタンスとなります。
⇒日清製粉グループ本社(2002)の最新の株価はこちら!
ベルトラ(7048)は、1万4000種類以上の海外オプショナルツアーを予約できる現地ツアー専門サイト「VELTRA」を運営。前回の当コラムでも「海外旅行」関連銘柄として取り上げましたが、為替相場が円安是正の動きを見せてきたことから、海外旅行を計画する人たちがますます増えてくることが期待されます。株価は、9月の高値694円をピークに調整の動きを見せていましたが、足元では切り上がる26週移動平均線を下値支持線として上昇トレンドが継続しています。
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住石ホールディングス(1514)は、石炭の輸入販売のほか、人工ダイヤなど先端素材の製造販売、砕石の採取・加工・販売の3事業、さらには海外の石炭会社への投資などを行なっています。石炭価格は上昇トレンドが続いていますが、今後は円高によるコスト減が期待されます。一方、石炭の販売価格については価格引き下げの圧力がすぐに強まるとは考えづらいため、コスト減が業績の上振れにつながりそうです。足元の株価は、著名投資家・井村俊哉氏の保有比率の上昇を手掛かりに思惑的な動きが見られるので、需給の変化に注意しながらの押し目狙いのスタンスがいいでしょう。
⇒住石ホールディングス(1514)の最新の株価はこちら!
ラクト・ジャパン(3139)は、バターやチーズ、脱脂粉乳といった乳製品原料を中心に輸入・販売する食品専門商社です。足もとでは外食・レジャー産業に客足が戻りつつあり、業務用食品原料の需要が回復基調にあります。一方で、世界の商品市況の高騰や円安の進行を背景に食品価格の値上げが相次ぐなか、消費者の買い控えの動きが見られていたので、今後は円高の業績への寄与が期待されます。株価は、7月の高値2582円をピークに調整が続いていましたが、足元で2000円水準での底堅さが見られており、上値抵抗線として意識される13週・52週移動平均線を突破してからのさらなる株価上昇に期待したいところです。
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以上、今回は「円高メリット」銘柄を発掘しました。
日経平均株価とTOPIXとの値動きを表しているNT倍率(日経平均÷TOPIX)は、円安が進んでいた8月半ばに14.58倍に上昇。その後は緩やかな調整が続き、10月以降は14.00~14.20倍辺りで推移していました。しかし、今回の株価の急落局面においてNT倍率は一時13.84倍まで低下し、3月半ばにつけた13.85倍をわずかに下回ってきました。
つまり、幅広い銘柄が売られているものの、相対的には円安の影響を受けやすいハイテク株などのインパクトが大きい「日経平均株価銘柄」より、メガバンクや内需系のインパクトが大きいTOPIX銘柄のほうが強かったことになります。
為替相場は先行き不安定な状況が継続する可能性もあるので、円安メリットや円高メリットの物色の方向性を探るうえで、NT倍率の推移を見ておくこともおすすめします。
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