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11/10(水) 6:00配信
阿川佐和子/岸田総理に「聞く力」を聞く〈「嫌いな政治家は?」「いっぱいいますよ」〉――文藝春秋特選記事【全文公開】
「文藝春秋」12月号の特選記事を公開します。/阿川佐和子(作家・エッセイスト)×岸田文雄(内閣総理大臣) ◆ ◆ ◆ 阿川 お久しぶりです。 岸田 5年前の対談(『週刊文春』2016年2月18日号「阿川佐和子のこの人に会いたい」)以来ですね。 阿川 テレビで拝見して、おや、目が充血してるぞって思う時もありますが、お疲れではないですか? 岸田 大丈夫です。元気にやっております。 阿川 まずは御礼を申し上げようと思って。私は2012年に『聞く力』という本を出したんですが、岸田さんが総裁選の時に「自分の持ち味は聞く力」と強調してくださったおかげで、この度、増刷が決まりました。 岸田 それはよろしゅうございました。 阿川 増刷帯の惹句を「『聞く力』は大事です。ね、総理?」と、勝手に書かせていただきました。 岸田 こちらこそ、宣伝していただいて(笑)。 阿川 ちなみに……総理も拙著をお読みになって、「聞く力」をキャッチフレーズに? 岸田 すみません、直接のきっかけではなかったんですが(笑)。この本のことは、なんか覚えていますよ。 阿川 「なんか覚えている」? (尋問調で)ほう、では読んではいらっしゃらない? 岸田 すみません(苦笑)。でも、この本はよく売れて話題になりましたよね。 阿川 無理にほめてくださらなくても(苦笑)。じゃ、「聞く力」と言うようになったのはいつから? 岸田 昨年の総裁選の前から持論としてありました。政治家というのは聞く方ではなく、しゃべる方で競い合うもの。口八丁手八丁、滔々と語る人が多いけれど、自分はそこで競ってもなかなか分が悪い。 阿川 私がレギュラーの番組『ビートたけしのTVタックル』には政治家の方もよくゲストに来られますが、たしかに、みなさん、他の方が発言している時も割り込んで、誰も人の話を聞きませんね。 岸田 人の話をじっくり聞ける政治家って少ないでしょ。30秒黙るのすら我慢できない人もいますから。 阿川 例えば誰が一番話を聞かないんですか? 岸田 いやいや(笑)。誰というか、たくさん居ますよ。 阿川 たくさんね(笑)。安倍さんは? 岸田 安倍先生はバランス感覚あるほうですよ。 阿川 それで、岸田さんは一方的にしゃべるだけではダメだと思われた? 岸田 しゃべるためには、インプットも必要です。だから自分なりに考えて、私は「聞く力」だなと。そもそも国会議員のことを「代議士」と言いますよね。代わりに議論する。誰の代わりに議論するか。それはやっぱり国民の声をしっかり聞いて議論しないといけない。 「二」の付く人のイメージが悪かった? 阿川 今回は二度目の挑戦でしたが、昨年の総裁選に敗れてから、何を考えて過ごしてこられたんですか。 岸田 去年の総裁選は力不足でした。負けてみるとやっぱり世の中の評価は厳しかったですよね。 阿川 「政治生命は終わった」「頼りない」とか? 岸田 そういう声もいっぱいありました。最初は「もうダメかな」と思ったこともありましたが、自分を見直すいい機会だと前向きにとらえるようにしたんです。それで1年間、厳しい声にも耳を傾け、耐え続けてきた。これでだいぶ鍛えられたと思います。 阿川 ボコボコにされて、「もともと政治家なんか好きじゃなかったんだから辞めてやる!」とか思わない? 岸田 いえ、ここまで来たなら何としても踏みとどまってやろうと思いました。 阿川 でも、政治家って嫌なやつが多いな、とか。 岸田 まあまあ、程度の問題ですけれどね。 阿川 たとえば誰ですか? 具体的に。 岸田 いやいや(笑)、いっぱいいます。 阿川 なかなか口がお堅い(笑)。では今回、再挑戦を決意したきっかけは? 岸田 なにより、国民の政治不信が高まっていたことが最大の理由です。「政治家の言葉は心に響かない」「政治家の声を聞こうという気にもならない」といった声を耳にし、国民との乖離は深刻な状況でしたから。とくに地元の広島に帰った時には痛切に感じました。 阿川 広島といえば、いろいろな問題がありましたもんね。2019年の参院選広島選挙区の大規模買収事件で自民党から河井案里元議員側に1億5000万円が振り込まれた問題は、いまだにはっきりしてないし。 岸田 他の地域でもIR(いわゆるカジノ)を巡る汚職事件などが政治不信につながっています。そもそも日本全国に共通する問題として、コロナで国民の心が傷ついている。それなのに、国民の声がなかなか政治に届かない。 それから、自民党の中で、一部の有力な政治家が全て物事を決めているようなイメージもありました。 阿川 「二」の付く方ですか? 岸田 いやいや(笑)、ハイ。 阿川 えっ? 「ハイ」? 岸田 いや、いろんな方々がおられました。ちょっとそのあたりもイメージがよくなかった。 阿川 そうですね。怖かったです。 岸田 そんな折、3年ごとにある総裁選がめぐってきた。本来の自民党はバラエティある人材が居て、多様な意見があって、若い人たちの声もしっかりと聞き取れる包容力のある政党です。それを党内外に示すことが私の役割だと思い、総裁選に再挑戦すると決意しました。
本文:8,728文字
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阿川 佐和子, 岸田 文雄/文藝春秋 2021年12月号
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