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北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は29日、最高人民会議第14期第5回会議の第2日会議で演説し、政治、経済、文化、国防、対外関係など幅広い分野での施政方針を明らかにした。南北関係改善に意欲をみせつつも、韓国側に措置を取るよう要求し、対米関係では失望感をあらわにした。同会議で国務委員会の人事も発表され、金総書記の実妹、金与正(キム・ヨジョン)氏が昇格した。
◇演説は経済と農業、南北関係に比重
金総書記の最高人民会議での施政演説は、2回目の米朝首脳会談が決裂したあとの2019年4月、第14期第1回会議以来。朝鮮中央通信は「歴史的な施政演説」と表現し、演説の全文は北朝鮮国内の主要機関に配布され、活動の指針となる。
金総書記は冒頭、最近繰り返しているミサイル試射を念頭に「国防部門で朝鮮半島地域の不安定な軍事的状況を安定的に管理し、敵対勢力の軍事的蠢動を徹底的に抑止することのできる威力ある新しい兵器システムの開発に拍車をかけている」と指摘したうえ「非常に速いスピードで開発されているわれわれの先端兵器と日増しに強化される人民軍と民間および安全武力の戦闘的面貌を見ても、社会主義勝利の前途を強力に切り開いていくわが党と国家の強大さを確信することができる」と誇示した。
演説で政治的課題として掲げたのは▽経済の再建▽農業(食糧)▽人民生活の向上に向けた軽工業▽水産業▽科学・教育・保健医療▽新型コロナ対策▽国防▽南北関係▽外交――など。朝鮮中央通信の記事をもとに分量を計れば、経済が20.7%と最も多く、農業16.0%、南北関係15.8%と続く。以下、科学・教育・保健医療9.6%、思想8.9%、外交8.0%などとなっている。国防関連は2%だった。
◇南北と米朝
その中でやはり注目すべきは南北関係と米朝関係だ。
金総書記は南北関係に関連して「こう着している現在の北南(南北)関係が一日も早く回復され、朝鮮半島に恒久平和が訪れることを望む全民族の期待と念願を実現するため」として「いったん10月初めから、関係悪化で断絶させた北南通信連絡線を再び復元する」と表明した。
北朝鮮は今年7月、韓国との間の通信連絡線を13カ月ぶりに復元したが、その2週間後には米韓合同軍事演習を理由に再び中断していた。
金総書記は「北南関係が回復し、新しい段階へ発展していくか、それとも引き続き今のような悪化状態が持続するかは南朝鮮(韓国)当局の態度いかんにかかっている」と述べた。いったん連絡線を復元してみるが、その後、南北関係が改善ムードに進むか韓国の対応にかかっている、とボールを投げた形だ。
また、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が提案した終戦宣言については「北南間の不信と対決の火種となっている要因をそのままにしていては、終戦を宣言するとしても敵対的な行為が続くであろう」とけん制しながら、改めて二重基準や米韓合同軍事演習などの撤回を求めた。
バイデン米政権については「(政権発足以後)8カ月間の行動が明確に示したように、われわれに対する米国の軍事的脅威と敵視政策は少しも変わったものがなく、かえってその表現形態と手口はいっそう狡猾になっている」と批判した。
米側が、外交を通した解決や前提条件のない対話に臨む姿勢を見せている点について「あくまでも、国際社会をあざむき、自分らの敵対行為を覆い隠すためのベールにすぎず、歴代の米政権が追求してきた敵視政策の延長にすぎない」と失望感をあらわにした。
◇金与正氏の再度の昇格
最高人民会議では国務委員会の人事も発表され、金徳訓(キム・ドックン)首相(党政治局常務委員)が副委員長に、趙甬元(チョ・ヨンウォン)書記(党政治局常務委員)や金与正氏、朴正天(パク・ジョンチョン)書記(党政治局常務委員)がそれぞれ委員に選ばれた。
金与正氏は今年1月の党大会で政治局候補委員から外れ、第1副部長から副部長に降格していた。その金与正氏が今回、強力な国家機関である国務委員会のメンバーに昇進し、南北・対米関係を総括してきた立場にふさわしい指導部内での地位を与えられた形だ。金与正氏は国務委員でありながら、党では中央委員や副部長であり、その職位・職責は不釣り合いなため、金与正氏は近く、党でも昇進する可能性がある。
一方、軍事部門を統括しながら党政治局常務委員から降格した李炳哲(リ・ビョンチョル)氏、対米交渉の実務を担当してきた崔善姫(チェ・ソニ)第一外務次官は国務委員から退いた。
大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。
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