2021年11月9日(火)
文化生活部 橋爪充
室町時代に活躍した連歌の“巨星”宗祇法師の生誕600年を記念し、法師が眠る裾野市で、愛好家団体「裾野市宗祇法師の会」などによる著名文学者を招いた連句のイベント「紡ぐ言霊 紡ぐ人の和」が開かれた。俳人長谷川櫂さん、歌人小島ゆかりさん、文芸評論家三浦雅士さんが、メールなどのやりとりで事前に完成させた36句からなる連句「歌仙」の読み解きを行った。1句ごとにインスピレーションを得た絵画や文学作品などを示しながら、聴衆とともにイメージを膨らませた。
発句「富士すがしユニオンジャックのヨットの帆」を作った三浦さんは、英国人が撮影した駿河湾を走るヨットの写真、葛飾北斎の浮世絵「神奈川沖浪裏」などを示し、19世紀以降の日英関係や、英国における日本文化の受容のありように言及した。山部赤人の歌も援用し「人間の行動心理は地平線があることで安定する」と自作句の背景を解説した。
続いて「東京五輪の年にふさわしい発句に、悩みながら付けた」という小島さんが「ひかりの的となる夏の喉」と詠んだ。
「東京五輪の日本は危ないことだらけだった。反り身になって耐えながら、のど元に何かを突き付けられているようだった」とし、念頭に置いたという歌人岡野弘彦さんの日本列島を題材にした2首を披露した。「体を反らすと喉があらわになる。夏の光の的になるのは喉、と思いついた」とイメージの根源を説明した。
第三を担当した長谷川さんは前2句を映画の場面に見立て「青い海にヨットが揺れている。だんだんカメラが近づくと、白い水着の女性が身をそらしている」と像を結んだ。
「運命の滑車しづかに軋みつつ」とつないだ。「サスペンスが始まる予感のようなもの。静かにきしむ滑車で、歌仙全体の通奏低音のようなものが描けたらいいと思った」と創作意図を語った。
歌仙の解説を通じて奥深く幅広い言の葉の世界にいざなう3人のやりとりを、約150人が聞き入った。
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