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環境に優しく、ダイエットの効果がより期待できる植物性プロテイン「ピープロテイン」。筋肉増強を目指すヴィーガンやベジタリアンでも安心して摂取できると、植物ベースの食品としての市場では徐々に拡大しています。
《目次》
英語の「ピー（Pea）」は日本語で「えんどう豆（成熟しないうちにさやから取り出したものを、“グリーンピース”と一般に呼ぶ）」の意であり、そのえんどう豆からつくられるプロテインということで「ピープロテイン」になります。つまりは、植物性プロテインのひとつということ。
えんどう豆は良質タンパク質を含み、ビタミンではB群とEを豊富に含んでいることなどにより、大豆に勝るとも劣らず栄養価も高い豆となります。また、大豆アレルギーと他の豆類のアレルギーの関係は明確にはわかっていないところではありますが、他の豆類とはアレルゲンの交差性は少ないことが報告され、豆類をまとめて食事から除去する必要はないとされています。
というわけで現在、大豆アレルギーの人でも食べられる可能性の高いえんどう豆を原料とする「ピープロテイン」に注目が集まっています。ヴィーガンやベジタリアンでありながら、大豆アレルギーに悩んでいるトレーニーたちも少なくありません。そんな人の間で、これが注目のタンパク源となっているのです。もちろん健康のためにタンパク質の摂取を心がけている人の中にも、大豆アレルギーに悩むヴィーガンやベジタリアンもいることでしょう。そんな人にも、この「ピープロテイン」はおすすめできるのです。
ただし、このえんどう豆（グリーンピース）に対しても、誰もがアレルギーを起こさないというわけではありません。なので、ご心配の人は事前に医師へ相談することをおすすめします。
そんな植物性プロテインのひとつ「ピープロテイン」を選ぶべきメリットと、副次元的効果をご紹介します。
【1】環境負荷が少なく、地球に優しい
｢ピープロテイン」の原料であるえんどう豆の栽培方法にも、現在は評価が高まっています。牛を育てることや大豆の栽培では、多くの水を使うと言われています。ですが、それに比べてえんどう豆は水の使用量は大豆よりも少ないとされ、環境に与える影響が少ないため「サスティナブルなタンパク源」とも言えるのです。
【2】体内でゆっくり消化し、満腹感が得られる
ある研究によると、「ソイプロテイン」と同様に「ピープロテイン」を飲むことでも満腹感が増し、食間の時間が長くなったとの報告があります。つまり、「ピープロテイン」でも食べたいという欲求が抑えられ、不必要な間食を減らすことでダイエット（減量）効果が期待できるというわけです。
【3】必須アミノ酸「BCAA」が豊富
アミノ酸には、人間の体内では合成することができず、食べ物から摂取しないといけない必須アミノ酸と呼ばれるものがあります。その中でも筋肉のエネルギー源となっているのが「BCAA（バリン、ロイシン、イソロイシン）」です。
｢ピープロテイン」にも、このBCAAが豊富に含まれているという報告もあります。その含有量はさまざまなメーカーを平均しても、1食あたり4000mg前後含有されています。つまり、「ホエイプロテイン」とほぼ同量ということが確認できます。
【4】低アレルゲン
大豆や牛乳にアレルギーを持つ人にとって、ソイプロテインやホエイ・カゼインプロテインの摂取が難しいという悩みはずっと付きまとうものです。そんな人に代替植物性プロテインとして摂ることがおすすめできるのが「ピープロテイン」です。
ただしここで重ねて言いますが、えんどう豆に対してアレルギーを持つ人も存在します。そんな人は、この「ピープロテイン（えんどう豆）」にも反応してしまうことでしょう。なので、不安な人は可能な限り医師への相談した上で摂取することをおすすめします。
【5】鉄分・アルギニンが豊富
｢ピープロテイン」は、鉄分やアルギニンなどの成分も豊富です。このアルギニンとは、疲労回復を目指すアスリートやトレーニーが積極的に摂取している成分のひとつです。
上述のように「ピープロテイン」は、必須アミノ酸「BCAA」が豊富です。しかし、留意しておくべき点は、その中で「メチオニン」と呼ばれるアミノ酸の含有量が少なめだということ。
ですが、この「メチオニン」は玄米や白米、肉や魚などのほかの食品から容易に補うことができるので、「メチオニン」を補えるタンパク質と同時に摂取することをおすすめします。
米国・ウィスコンシン州郊外のタートルレイクにある、かつて乳製品の製造に使われていた加工工場では、現在約1000kgのえんどう豆の粉が入った布袋を機械が持ち上げながら開封し、パステルイエローの粉が舞い上がり、専用の大きな容器に入れられています。
『ピュリス』社のプロセスエンジニアであり、工場のバーチャルツアーを担当しているメラニー・スミエックさんは、「とても忙しいこの施設の中でも、ここは最も静かな部屋の1つなのです」と話しています。
えんどう豆の皮を剥（む）き挽（ひ）いたこの粉末は、ベルトコンベアに乗せられて工場内の別のセクションへ運ばれていき、スーパーマーケットでもおなじみのフェイクバーガーやヴィーガンシェイク、筋肉増強用のプロテインバー製造のための貴重なタンパク質の粉への分離となる最終加工が行われます。
グローバル市場調査会社『グランドビューリサーチ』社の分析によると、「ピープロテイン」市場はすでに推定2億1300万ドル規模となっています。現在、植物ベースの食生活が主流になり続けているため、2025年までには2倍の規模になると予想されています。
『ピュリス』社は北米最大の「ピープロテイン」メーカーであり、そのCEOのタイラー・ローレンゼン氏は「グローバル食品会社である『カーギル』社との合弁により、ミネソタ州に生産量を2倍とするための新施設の建設が可能になりました」と、語っています。
それもそのはず、「ピープロテイン」は今や世界中で注目されているのです。
『ビヨンド・ミート（Beyond Meat）』社は、この素材を使ってハンバーガーやソーセージを製造し、『リップルフーズ（Ripple Foods）』は植物ベースのミルクやシェイク、フローズンデザートを製造、『ピートス（PeaTos）』社は1袋あたり4gのプロテインを含んだスナック菓子を5種類の味で製造し、『オゥイン（Owyn）』や『ラダー（Ladder）』のようなサプリメントのスタートアップ企業はえんどう豆のプロテインパウダーを製造しています。
では、何がこのような成長を促しているのでしょうか？ それに、えんどう豆を摂取することのどこが画期的で健康的なのでしょうか？
供給と需要、需要と供給、なぜ今「ピープロテイン」が人気なのか理解するには、その両側面から考察する必要があります。
まず、世界中の料理でえんどう豆は主食として使われてきています。例えるなら、インドのダルカレー、ロシアのえんどう豆スープ、中国の豌豆黄（えんどう豆の羊羹）などになります。
えんどう豆の健康効果と環境へのメリット
えんどう豆のような豆類は身体に良いだけでなく、農地にも優しいのです。豆類には窒素固定作用があるため、規模の大小に関わらず多くの農業システムに欠かせない作物となっています。それに小麦、トウモロコシ、大豆などの他の作物に比べて、栽培に必要なエネルギーが少ないのも特徴です。
『ピュリス』社のCEOタイラー・ローレンゼン氏は、「父が80年代半ばに後に『ピュリス』社となる会社を設立した理由は、えんどう豆を栽培して土壌を豊かにする農家に市場を提供するためだった」と語っています。
当時の製造業社は、えんどう豆を主として家畜の飼料やペットフードに使用し、販売業社は海外に輸出していました。これでは農家は儲からないし、動物性タンパク質を育てるために植物性タンパク質を大量に与えていたのではまるで意味がありませんでした。
｢ピープロテイン」を製造する大手企業は、「自社の製品をハンバーガーやスナック菓子、プロテインシェイクなどアメリカ人が好む食品に加工することで、現在のアメリカ国内の農業の非効率性を解消することができる」と主張しています。
粉末状にしたえんどう豆は、もちろん豊富なタンパク質を含んでいます。
人気ブランドのひとつである『ネイキッドピー（Naked Pea）』は、2さじに約27gのタンパク質、約2gの炭水化物、約120カロリーが含まれています（同量の「ホエイ」製品を平均すると、約25gのタンパク質、約3gの炭水化物、約120カロリーです）。
それに「ピープロテイン」は、乳製品ベースの「ホエイ」よりも一般的に安価です。しかし、親しみやすさ、サステナビリティ（持続可能性）、コスト、栄養などを考慮しても、大衆的な需要を生み出すにはそれだけでは十分ではないことが多いのです。
そこで気になるのは、「そのために必要なものは？」です。その解答が、「ブーム」という別の仕掛けが必要となるわけです。それがここ数年、その「ブーム」は「植物ベースの食事」というカタチでやってきたのです。
『アンチエイジングのためのヒーリングスーパーフード』の著者であるカレン・アンセル氏は、「植物ベースの食事がトレンドになっているのには、さまざまな理由がある」と言います。
植物を中心とした食生活は、心臓病、糖尿病、肥満などのリスクを軽減し、健康を増進することができると長年の研究でも明らかになっていることも、それに対する大きな要因のひとつでしょう。それに加え最近では、「マーケティングも人気の大きな推進力になっています」と、アンセル氏は話しています。
続けて、「ベジバーガーは何十年も前から存在していますが、『ビヨンド・ミート』や『インポッシブル・フーズ』などの企業が2018年頃から全国的なマーケティングキャンペーンを展開するようになってから、植物ベースの肉が突然トレンドに感じられるようになったのです」と話しています。有名人のインフルエンサーも、文化的な側面を後押ししているようです。
2016年8月にジョージ・フロイド抗議運動として、試合前の国歌斉唱の際にベンチに座ったまま立ち上がらずに起立を拒否したことで以来試合に出場できないまま契約終了に至った元サンフランシスコ・49ersのクォーターバック、コリン・ケイパーニックをご存知でしょうか？ 今では一部とは言えますが、「真のアメリカンヒーロー」とも謳われている彼を筆頭に、イギリスのコメディアン・俳優のラッセル・ブランドまで、多くの著名人も植物ベースの食事を取り入れています。また、Netflixのドキュメンタリー映画『ゲームチェンジャー：スポーツ栄養学の真実』では、アーノルド・シュワルツェネッガーまでもが、「肉を食べる量を減らしている」と語っています。
ヴィーガンであるジェームズ・キャメロンが製作総監督を務めたこの映画では、「動物性食品を食べると運動能力が低下したり、心臓が悪くなったり、性機能が低下する」と主張していました。
（しかし「メンズヘルス」US版では、専門家のこういった主張に対して全肯定はしていません。これらの主張の多くは時代遅れであったり、不完全であったり、誤って解釈された研究に基づいたものと判断しているからです）
さて、植物ベースとして改めてブランディングされたヴィーガンダイエットの台頭と、アメリカでは数十年にわたって牛乳の消費量が減少していることが組み合わさり、現在では乳製品以外の代替品に目が向けられる市場が生まれています。
さらに、新たな植物ベースのプロテインへの注目は高めているのは、高タンパク質摂取が常であるクロスフィッター（歩く・走る・起き上がる・拾う・持ち上げる・押す・引く・跳ぶなど、「日常生活で繰り返し行う動作（ファンクショナルムーブメント）」をベースにそれぞれを万遍なくトレーニングする人々）たちです。日々激しいトレーニングを行った上に向上を目指す彼らにとって、動物性食品が食べられないとなれば、食の選択肢は豆類などと限られてくるのです。
ですが、この食生活の変化をめぐる議論において、「えんどう豆のプロテインが動物性ベースのタンパク質の利点をすべて備えているかどうか？」という点は見落とされています。その答えを知るには、タンパク質の品質に関する専門的な世界に目を向ける必要があるでしょう。
植物ベースの食事を実践している人々は、「動物性食品の摂取を控えることで運動能力が向上した」と主張しがちですが、「植物性の食事が運動能力に対して優れた影響を与える」という具体的な研究結果は事実、まだありません。
さらに、身体のパワーアップを図るという点に関しては、「植物ベースのプロテインパウダーは、乳製品由来であるホエイやカゼインと同程度の効果」とされています。
ピープロテインは、運動後の筋肉増強には役立つ
ニュージーランドのオークランド工科大学のスポーツ生理学、及び栄養学研究員であるエリック・ヘルムス博士は、「ピープロテインは、運動後の筋肉増強には役立つ」と、説明しています。
しかしながらヘルムス博士は、「ピープロテインが良いかどうかを判断するには、いくつかの確認が必要となります」と、注意を促しています。その1つは、タンパク質の消化率（補正アミノ酸スコア）をチェックすること。これは、タンパク質のアミノ酸組成を人のニーズに合わせて測定する方法になります。
ヘルムス博士は次のように説明します。
｢『ホエイプロテイン』は、筋力をアップするために必要な9種類の必須アミノ酸をすべて含んでいるため、絶対的基準の1と評価しています。『ピープロテイン』の場合も0.8または0.9と、それほど遜色はありません」。
さらに、「人々が知りたいのは、『ヴィーガンや植物ベースの食事をしていると、そのことでフィットネスやスポーツのパフォーマンスに悪い影響が出ないか？』ということです。現在わかっているデータでは、そのようなことは恐らくないと考えられます」と、博士は話しています。
しかしそれには、「必要なアミノが補給できるような、さまざまな食品を摂取していることが条件となります」と博士は続けます。さらに、「ポテトチップスやクッキー、甘いシェイクなどをたくさん摂取していたら、それが例え植物ベースのものだとしても『ピープロテイン』でつくられたものだとしても意味はありませんからね」。
ヘルムス博士自身は研究結果を知った上で（自分でもいくつかの研究を行なっていながら）、「ピープロテイン」よりも「ホエイプロテイン」を愛用していると言います。「ホエイは10年以上にわたる味と食感の改善を行なっています」というのが彼の言い分です。
「ピープロテイン」と「ホエイプロテイン」を比較
｢ホエイプロテイン」は自然に液体に溶けやすく、ミルクのような魅力的な味わいがあり、さらにいろいろなフレーバーもあります。ヘルムス博士が最近試してみた「ホエイプロテイン」の味に関して、「人気のキャラメル商品『バターフィンガー』を食べたような気分になったよ」と言います。
家畜の飼料として使われていた「ピープロテイン」が、スポーツサプリメントとして注目を集めるようになったのは急速な変化でした。が、その一方で、えんどう豆の持つざらざら感と植物性の風味は、一部の消費者にとってはネックになってもいるようです。
｢『ホエイプロテイン』と比べると『ピープロテイン』は、スムージーにドロドロした食感を与える傾向があります」と、博士は自身の感想を述べています。
「ピープロテイン」各社の競争
人気のある『ネイキッドピー（Naked Pea）』の販売会社『ネイキッド・ニュートリション（Naked Nutrition）』社の創設者であるスティーブン・ジーミンスキー氏が、「味はまさにえんどう豆そのもの」と言っているように、えんどう豆のプロテインメーカーにとって、「その味がしないこと」が最重要課題のひとつのようです。
『ピュリス』社のプロセスエンジニアであるスミエック氏は、「『ピープロテイン』は、ザラザラとしていて土のような味がすると悪い評判があることは理解しています」とも話しています。
『ピュリス』社の製造工程では、「可能な限り、口当たりの良い粉末となるよう目指しています」とのことで、まだまだ改良の余地がありそうです。同社は、えんどう豆の独特な風味を中和するため、苦味をより改善し、最終的にはなくすことができるような蒸発技術の開発を続けています。
それがクリアになるまでは、他の食品科学者やスタートアップ企業による革新的なフレーバーの開発次第となりますが、すでに大手企業もこの問題に取り組んでいるようです。
『ペプシコ』社は、スムージーの「ネイキッドジュース」や「エヴォルブミルク」の製造ラインに「ピープロテイン」を使用して、2021年初めには『ビヨンド』社と提携して新製品を開発するなど、このトレンドへの投資を続けております。「ピープロテイン」を配合したスポーツドリンクや炭酸飲料も、そのうちに販売されるようになるかもしれません。
この一連の流れを『ピュリス』社のCEOローレンゼン氏は、「植物由来の食材が今後より多く摂取することが“普通”となっていく、そのプロセスの一部分を今、皆さんは垣間見ているところなのです。植物を食べるということを『サラダを食べること』と同様のように誤解している人もいるでしょう。ですが、それはちょっと違います。将来は、ハンバーガーのことを指すようになるのかもしれません。これは正しい方向への一歩なのです」と言います。
ですが、サラダを食べることは悪いことではありません。むしろ、健康に良いことでもあるのですが…。
味に関してはまだまだ目をつむる必要のあるモノも、あるかもしれません。ですが、まずは試してみることも大切です。ですが、アレルギーが心配な人は医師の相談した上で、アレルギー検査を行ったあとで購入することをおすすめします。
Source / Men’s Health US
Translation / Kazuhiro Uchida
※この翻訳は抄訳です。
