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日本ではITのアナリストやコンサルタントの存在感は、海外に比べてなぜ薄いのでしょうか? テレビなどでITの話題となると、専門外の人がコメントしていることに大きな違和感をもつ、と著者は言います。33年以上にわたりB2BのITビジネスにかかわり、現在はクラウドERPベンダーのインフォア(Infor)のマーケティング本部長の北川裕康氏が本音と洞察で業界動向を掘る連載です。
調査会社のガートナー社、グローバルでは社員が16,000名以上いて、売上が41億ドル(4,000億円以上)もあります。かなり大きな企業です。ITに関わる調査、コンサルティング、カンファレンスなどを提供しており、テクノロジーだけでなく、業種ごとのアナリストがいたりします。私は、長年ガートナージャパンの方にお世話になっています。教育サービスも提供しているので、以前、営業教育を受けたこともあります。
なんといっても、マジック・クアドラント、ハイプ・サイクルが有名ですね。これらは、ガートナー社が提供している特定分野のベンダーの評価や、特定分野のテクノロジの採用における状況を分析したものです。皆様も一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
マジック・クアドラントは、特定市場におけるテクノロジ・プロバイダーを位置づけするもので、競合しているのはどのプレイヤーかを理解することができ、導入選定の参考にされます。各社のパフォーマンスを、2つの軸(実行能力、ビジョンの実効性)で評価して、「リーダー」、「概念先行型」、「特定市場指向型」、「チャレンジャー」に分類します。ベンダーがよく、「うちはマジック・クアドラントのリーダーです!」と宣伝します。あっ当社もだ(笑)。
ハイプ・サイクルは、特定のテクノロジーを分析した上で知見を引き出し、今後5~10年にわたって高度な競争優位性をもたらす可能性が高い、押さえておくべき先進的なテクノロジーおよびトレンドを、簡潔にまとめたものです。黎明期、「過度の期待」のピーク時期、幻滅期、啓蒙期を経て、生産性の安定期になります。ハイプは、誇大宣伝の意味で、「過度の期待」があるから、このような名前になっているのだと想像します。幻滅期は、ジェフリー・ムーア氏のキャズム=深い崖のコンセプトに近いですね。幻滅期が深い崖で、普及のためには、それを乗り越え普及するイメージでしょうか。今後、押さえるべきテクノロジーを考える上ではとても参考になります(ところがなぜか、2021年のハイプ・サイクル[※1]では幻滅期のテクノロジーが表記されなくなりました)。
その他、市場調査が中心ですが、IDC Corporationも有名で、日本にはIDC Japanがあります。昔、日本にもあった「Windows NT World」などを発行していた出版やイベント運営のIDG社は、今はIDC社の親会社です。そして、IDG社は投資会社のBlackstone社に買収されています。投資会社の一部になったので、規模は公表されていませんが、IDG社も、ガートナー社に匹敵するようなそれなりの規模だと思います。なお、IDGのメディアについては現在でも続いており、「Computerworld」などの記事が時々、日経BPから出ていたります。
他にも、大手調査会社のフォレスター・リサーチ(Forrester Research)社、コンステレーション・リサーチ(Constellation Research)社なども有名です。また、日本には、IT系の調査会社としては、ITR、富士総研、富士キメラなどがあり、国内のIT市場の調査には定評があるようです。
ところがなぜか、これらのアナリスト系の会社は、日本では相対的に存在感が薄いですね。ガートナーは日本でも早い成長をしていると聞きますが。アナリストというと、日本では金融・証券市場の方が一般的ではないでしょうか。テレビでもコメンテータとして証券アナリストはよく見ますが、ITのアナリストを見ることは稀です。日本でITの話題となると、よく知らない人が専門家としてテレビでコメントしているので、いつも私は大きな違和感をもちます。
[※1] 先進テクノロジのハイプ・サイクル:2021年 Gartner
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北川裕康(キタガワヒロヤス)
クラウドERPベンダーのインフォア(Infor)のマーケティング本部長。33年以上にわたりB2BのITビジネスにかかわり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workdayなどのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションを担当。その以前は富士通とDECでソフトウェア技術者。マーケティング、テクノロジー、ビジネス戦略、人材育成に興味をもち、日々格闘中。
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