インタビュー連載連載 ゲームカルチャー解体新書特集・連載
2021/02/23
ライター 戸簾俊広
ファッションに軸足を置きながら、セールスやPR、企画立案の立場で約15年もの間、国内外のブランドビジネスに関わらせていただいています。ファッション業界に携わる私が、ゲーム業界で活躍している方々、ゲーム好きのゲストとの対談を交えながら、「ファッション × ゲーム」の可能性や新しい価値を提供することができたら。そんな想いで新連載をスタートさせていただきました。第5回は「ファイナルファンタジー14(FINAL FANTASY14以下、FF14)」のキャラクターコンセプトアーティスト、生江亜由美氏に迫ります。生江氏は、キャラクターの容姿や装備の2Dデザインを担当しているほか、「FF11・12」の2Dアートも手掛けてきました。
戸簾俊広(以下、戸簾):なぜゲームの衣装をデザインする職に就いたのですか?
生江亜由美(以下、生江):元々「ゲーム業界に入りたい」と思っていたわけではなく、学生時代は西洋服装史を専攻しました。服を作るならまずは歴史を知りたかった。講義の中で印象に残っている「衣服は第二の皮膚」という考え方は、キャラクターデザインの仕事に通じるものがあると思います。当初、デザイン画はアクリル絵の具などのアナログ画材で描いていましたが、iMacが普及したことでデジタルペイントにはまり、独学に近い形でイラストを描き始めました。
戸簾:最初は趣味からスタートしたんですね。
生江:趣味で約4年続けました。「ヴォーグ イタリア」のイラストを描いていた先生が学校に特別講師でいらっしゃり、その方にギャラリーを紹介してもらい、3カ月に1回のペースで個展を開催しました。作品がある程度溜まったところで、スクウェア(現スクウェア・エニックス)に応募しました。当時のスクウェアは、「CG技術はナンバーワン」と言われるくらいすごかった。私自身、代表作「ファイナルファンタジー」はプレーしていましたが、ゲームCGについては何も知らない状態で入社しました。最先端のCG技術を目の当たりにして「服だけでなく帽子や靴のデザイナーにもなれるし、そのモデルすら自分で創れる」という点に面白さを感じて、いつの間にかのめり込んでいきました。
戸簾:創作に対するストレスはないですか?
生江:「モノづくり」ができる環境に身を置ける有難みが大きいので、デザインの仕事にストレスを感じたことはあまりないですね。発注を受けてからの仕事なので、ファッションデザイナーというよりは舞台や映画衣装の方に近いと思いますが、元々得意ではなかったり興味がなかったりするジャンルに対しても、調べてアプローチできるのが面白いです。「世の中にこんなものがあったのか」という喜びを感じながら、それを材料として組み上げる過程が楽しいです。
戸簾:現在デザイナーは何人くらい?
生江:私が所属する「FF14」のチームは、服と装備品をデザインする人で10人くらいです。多分、社内では一番大きいチームだと思います。
戸簾:男女比はどのくらいですか?
生江:私が入った時は男性が大半、女性は1、2人でした。今は全体の3~4割くらいが女性になりましたね。
戸簾:学生時代に、マックイーンに多大な影響を受けたとか。
生江:はい。アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)とジョン・ガリアーノ(John Galliano)が大好きでした。当時は情報が少なく、深夜放送の「ファッション通信」やコレクション雑誌などで情報を集めるのに苦労しました。当時の二人のショーはロケーションや演出も凝っていて舞台のようで、「ショーの中に夢の世界が詰まっている」と感動していました。世界中の美しいものを集めた“人工美の極み”みたいな(笑)。それなのに10分ほどで終わってしまうという儚さも含め、凄い衝撃を受けました。
戸簾:実際に購入されていたんですか?
生江:はい。半年に一回くらい購入していました。学生時代は成人式や卒業式など特別な時がほとんどでしたが、振袖や袴のレンタルにお金を使うよりは、ガリアーノのジャケットを欲しがっていました(笑)。初めてボーナスをいただいた時も、セールでマックイーンのジャケットを購入しました。今でもヤフオクやメルカリのフリマサイトでアーカイブを探しています。
戸簾:ゲーム開発者は「イラストを描き続けている人」というイメージだったので、「マックイーンという人物が出てくる」こと自体が衝撃的でした。
生江:最近装苑賞を取った男性が入社したんです。10年ほどアパレルに携わり、そこからCGを学ぶため専門学校に入ったそうです。彼からは“マーヴェラスデザイナー”というアパレルが使っているツールでパターン技術についてレクチャーしてもらっています。作業を見ると、パターンを引くスピードがめちゃくちゃ早いんです。「息をするようにパターンを引いている」と、3Dデザイナーが騒いでいました(笑)。現場のデザイナーも新しいことを学んで進化しています。今のゲーム開発の技術だと、どうしても布の表現が弱く、「彫刻+だまし絵」のような表現が主になっています。ここから技術がもう一段上がったときには、よりリアリティーのある質感をお届けできるかもしれません。
戸簾:そういう形でファッションとリンクするパターンもあるんですね。
生江:今は珍しいケースですけど、これからCG技術が進むにつれて、映画・ゲーム・ファッションなどの技術者の垣根は低くなっていくのではと考えています。
戸簾:コラボしてみたいファッションブランドはありますか?
生江:親和性が高いのは「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」ですかね。「FF14」の装備“コーティー”は、「ヴィヴィアンのジャケット」のフェティッシュなラインをイメージしています。キャッチーな要素やファンタジーなテイストを感じる「グッチ(GUCCI)」「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」との相性も良さそうです。
戸簾: ファッション業界に対して、近寄りがたいイメージを持つ人は多いですか?
生江:そういう声は社内でも聞きますね。私の友人も伊勢丹に行くと緊張するって言います。一緒に買い物に行っても頑なに試着室から出て来なかったりして、店員さんと話すことに尻込みしちゃうみたいです(笑)。でも私が入社したときに思ったのは、ファッション業界の人も同じようにオタクなだけだと思ったんです。どんなジャンルでも、熱心に好きなことをやっていることに変わりはないんですよね。知識があるだけでなく個々の見解も面白くて、話すと勉強になることが沢山あります。
戸簾:そうなんですよね。何かに没入している人たちは一つのオタクだし、何かしらのスキルを身に付けています。でもゲームをきっかけにファッションに交わってくれた人に、まだ僕は出会ったことがありません。このコラムをきっかけに色々な結びつきが生まれ、「面白いことができたらいいな」「業界の発展につながれば」と強く思っています。戸簾俊広: ジェムプロジェクター代表:2009年に国内外のファッション・ライフスタイルブランドのブランディング、PR、セールス、コンサルティングを手掛けるブランディングカンパニーGEM PROJECTORを設立。現在は、地方創生プロジェクトや会員予約制のテンポラリーレストランの立ち上げに向け奮闘する一方、「受信者から発信者へ」をテーマにしたオンラインサロンを運営
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