近年、人気が再燃しているボードゲーム。集って遊べるカフェやスペースが地域にできている上に、図書館で楽しむ動きも全国的に広がっている。
大町市立大町図書館は、昨年春からボードゲーム会を不定期で開き、幅広い年代に好評だ。資料登録したゲームは37あり、今年の夏から館外への貸し出しを始めた。
図書館でボードゲームとは、意外な感じがするかもしれない。図書館は情報や文化に触れる機会を提供する場でもある。遊ぶと必然的に会話が生まれ、初対面でも盛り上がる。
「市民の交流や来館のきっかけ、本への興味にもつなげたい」という職員の熱意を、市内の愛好家・曽根原秀樹さん(55)のゲーム寄贈が後押しする。同館の取り組みを取材した。
大町市立大町図書館の児童コーナーの一角に、貸し出しできるボードゲームの数々が並ぶ。パッケージの絵柄が主張してくるもの、「シンデレラが多すぎる」「ハゲタカのえじき」といった興味をそそるタイトルのもの。近くにはゲーム関連の書籍も置く。
利用者カードがあれば1週間、ゲームを借りられる。県立長野図書館によると、県内の公共図書館でゲーム会やゲームの企画展示などを行う例はあるが、館外への貸し出しは珍しいという。
ボードゲーム会などを中心になって企画している司書の大澤実夏さん(33)は「2、3種類残して、全部貸し出された時もありましたよ」。その言葉に「うれしいですね」と喜ぶのは、所有するゲーム約300種類の中から50種類ほどを同館に寄贈した、曽根原秀樹さんだ。
大澤さんがボードゲームに興味を持ったのは2018年、九州の公共・学校図書館を中心にゲームを使った企画を広める、日本図書館協会認定司書の高倉暁大さんの講演がきっかけだ。公共図書館は幅広く資料を集め、公開し、教養・レクリエーション・調査・研究のために提供する施設。「(ゲームも)図書館の理念にかなっている」とした。
大澤さんは、自館でゲーム会を開くため、長野市のボードゲームカフェに足を運んだり、松川村図書館が開いたイベントに参加したり、自らゲームを購入したり。21年4月に初回を開いた。以後、大澤さんの私物と図書館で購入した数種類のゲームでイベントを続けた。
今年の春、同館の動きに興味を持った曽根原さんが来館した。10年ほど前からボードゲームに興味を持ち収集、プレーしている。親の遺品整理をしていて、「自分の死後、集めたゲームは興味のない人にはごみ。使わないゲームはいろんな人に遊んでもらった方がいい」と考え、図書館に寄贈を申し出た。プレー中に敷くマットや、テーマにした漫画も寄贈。図書館の資料が充実した。
曽根原さんは「わいわい楽しめて、人の意外な一面も見える。人とつながり、知らない人とも同じ時間を共有できる」と魅力を語る。図書館の活動は「敷居を低くしてくれる」と歓迎。「いつか大町にボードゲームを楽しむサークルができたらいい」と夢を描く。
貸し出しは好調だ。紛失を防ぐため、カードやキューブなど部品の一つ一つに館名を記す。返却時に数を確認するなど手間がかかるが、大澤さんら職員は「興味を持ってもらえるなら」と笑顔だ。
大町市の有志が図書館で開いた恋活イベントでも、コミュニケーションツールとしてボードゲームが使われた。ゲームは文化。年齢を超えて交流が深まり、思考や知的好奇心が刺激される。図書館とボードゲーム、意外に相性がいいのかもしれない。
次回のボードゲーム会は1月21日午後1~4時。誰でも参加できる。同館TEL0261・21・1616
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