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【バンコク=村松洋兵】タイで軍政の流れをくむプラユット政権が体制維持に躍起になっている。親軍勢力が多数派を占める国会は17日、民主派が提出した議会・司法制度を変更する憲法改正案を反対多数で否決した。国軍の後ろ盾である王室の改革を求める運動が続くなか、締め付けは一段と強まりそうだ。
改憲案は民主派の市民団体や野党「前進党」が13万人超の署名を集めて提出していた。国軍が事実上、議員を任命している上院の廃止や、国軍の影響下にある憲法裁判所の裁判官の選出方法を変更する内容だった。採決では上院議員や親軍与党所属の下院議員が反対に回った。市民団体提出の改憲案は2020年11月にも否決されている。
親軍勢力はプラユット政権の基盤を盤石にし、王室改革要求を封じ込めたい考えだ。上院は法案や首相指名選挙の投票権を持ち、国軍の政治への影響力を担保している。憲法裁は過去に前進党の源流に当たる政党に解党命令を出すなど、親軍政権寄りの判決を連発している。
憲法裁は10日には王室改革を主張したデモ隊の学生リーダーら3人に対し「国王を元首とする立憲君主制の転覆を企てた」として違憲であるとの判決を下した。そのうえで王室改革要求を禁じる命令を出した。
判決はデモ隊だけでなく、野党にも影響を及ぼすとみられている。かねて王室改革を支持している前進党には、既に保守派の活動家から憲法裁に対して「憲法違反に当たる」として解党命令を請求する訴えが出されている。
国軍と対立するタクシン元首相派の最大野党「タイ貢献党」は、王室への侮辱を罰する不敬罪の改正に理解を示し、国会に当局がデモ隊の取り締まりで不敬罪を乱用していないか調査するように求めている。外交関係者のなかでは「こうした動きも王室改革要求とみなされ、解党を求める訴えが出される可能性がある」との見方もある。
タクシン派をめぐっては19年の民政復帰に向けた下院総選挙に際し、別動隊の政党が首相候補にウボンラット王女を擁立しようとしたことに対して、憲法裁が「立憲君主制に反する行為」として解党命令を出した。23年3月までに実施される次の総選挙を前にタクシン派の勢力をそごうとする動きが出るとの観測がある。
王室を巡る議論が活発になるなか、ドイツ紙ビルトによるとワチラロンコン国王は8日にドイツへ渡航したもようだ。国王はかねてドイツで過ごす時間が長いとしてデモ隊が批判していたが、デモが盛んになった20年10月以降はタイにとどまっていたとされる。タイの主要国内メディアは国王の渡航を報じていない。
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