リブゴルフの大きな課題の1つとされてきたテレビ放映がないことが解決された。米国の5大ネットワークの1つ、CWネットワークと3年間の契約を結んだリブゴルフCEOのグレッグ・ノーマンはインタビューに答え、自身とサウジアラビアの関係について言及した。
リブゴルフを率いるグレッグ・ノーマンCEOが、米国の有料チャンネル「ニュース・ネイション」のトーク番組に登場。番組ホストからの質問に答える形で、2023年のリブゴルフの展望や自身の胸の内を饒舌に語っていた。
「私はこの四半世紀以上の間、ゴルフ外交に心血を注いできた。我が人生をかけて世界各国を巡り、ゴルフ外交こそが何より意義あることだと実感している。ゴルフを活用して国を成長させる。そう、ゴルフ外交こそが、国を改善させる。素晴らしい! ハレルーヤ!」
いきなり「ハレルヤ」と言われても、思い出されるのはクリスマス頃に自ずと耳に入ってくる「ハーレルヤ、ハーレルヤ」という讃美歌の歌詞や調べばかりで、ノーマンがどんな意味合いを込めて「ハレルヤ」と口にしたのかは、よく分からなかった。
「分からない」と言えば、ここでノーマンが言った「国」とは、一体どこの国を指していたのかも、最初は分からなかった。
母国オーストラリアのことか、長年居住しているアメリカのことか、それともリブゴルフの本拠があるサウジアラビアを指していたのか。
だが、その答えは話の中で解明されていった。ノーマンはリブゴルフ創設にたどり着くよりずっと以前に、サウジアラビアがゴルフを媒介にして成長する様子を間近に目にして、「これぞゴルフ外交の成果だ」と感じたのだそうだ。
それを聞いたとき、「へー、なるほど。そうなんだ」と、私は珍しく素直に頷けた。
リブゴルフはノーマンが自身の見栄や意地のため、そして積年の恨みを晴らす雪辱のために創設したものだというのが、ゴルフ界あるいは世間の大方の見方だ。
ノーマンがサウジアラビアという国の成長と発展に寄与するために奔走し、リブゴルフを創設したという話は、少なくとも私は、これまで聞いたことも想像したこともなかった。
だが、もしかしたらノーマンの胸の中にあったリブゴルフ創設の目的は、構想段階では「雪辱のため」だったものが、途中から「サウジの成長と発展のため」のものへ変わっていったのかもしれないなと、今は思えている。
リブゴルフの23年シーズンは2月24日からメキシコのマヤコバで開幕予定だが、そのキックオフに先駆け、ノーマンは1月19日に念願のテレビ放映権契約をついに手に入れたことを誇らしげに発表した。
米国の5大ネットワークの1つ、CWネットワークと結んだこの契約は、米スポーツイラストレイテッド誌によれば、最初の2年間はリブゴルフ側からもCWネットワーク側からも契約金や放映権料といったお金が動くことはなく、広告収入が得られたら収益を折半し、3年目からはCWネットワークからリブゴルフへの放映権料の支払いが生じる内容でトータル3年の契約だという。
昨年のリブゴルフの試合はホームページとユーチューブ上の生中継のみに頼り、視聴率(視聴数)は下降の一途となった。それゆえ、テレビ中継はリブゴルフにとっては喉から手が出るほど欲しいものだったのだ。
しかし、契約発表の翌日(20日)、全米記者クラブ(ナショナル・プレスクラブ)から異例の抗議声明が出されるという驚きの展開になった。
抗議声明は18年にワシントン・ポスト記者が惨殺された事件とリブゴルフを関連づけ、「(サウジは)あの殺人を忘れさせようとしている」と記した上で、リブゴルフと契約を結んだCWネットワークの親会社であるネクスタ―を名指しで批判。契約解消を求めている。
ノーマンは昨年、「サウジという国について、どう思っているのか?」と問われた際に「誰もが失敗から学ぶ」と答え、侃々諤々の論議を巻き起こしたことがあった。
そして今年、冒頭のニュース番組に登場した際、再び同じ質問を受けたノーマンは、再び「誰もが失敗から学ぶ」と答えた。
ホスト役の男性から「サウジも本当に学んでいると思いますか?」と問い返されたノーマンは、大きく頷き、「イエス」と答えた。
「疑いようもないことだ。イエス。それは、私がこの目で見てきたことだ」
ノーマンはそう言って、さらに言葉を続けた。
「私はリブゴルフのCEOという役割を担うずっと以前から、サウジアラビアにゴルフコースを建設するために、何度も現地に赴いていた。今のようにリブゴルフのことが取り沙汰されるずっと以前から、私はサウジに足を運び、人々が良きゴルフコースを造り上げることを目指して一丸となって頑張る姿を目にしてきた。ゴルフには、そういう力がある。ゴルフを媒介にして、サウジはどんどん向上していった。だからこそ、今があるんだ」
よくよく調べてみたら、ノーマンが登場したニュース・ネイションという有料チャンネルの親会社は、CWネットワークの親会社であり、全米記者クラブから批判の的にされたネクスタ―であることが分かった。少々プロパガンダ的なニオイを感じさせられることは否めない。
だが、それはさておき、ノーマンが言った「ゴルフにはそういう力がある」という部分は、その通りだと感じさせられた。
そう、ゴルフには人々を1つにまとめ、モノゴトを向上させるべく動かしていく不思議な力が、確かにある。チャリティー・トーナメントは、その何よりの例と言っていい。
かつてPGAツアーにチャリティー目的の「シャーク・シュートアウト(現QBEシュートアウト)」を創設し、プレジデンツカップの雛形を考案した実績を持つノーマンは、そういう「ゴルフの力」を肌で実感してきているはずである。
今思えば、なぜノーマンは、リブゴルフ創設の前段階で、そういう「ゴルフの力」をきちんと説明した上でリブゴルフへの人々の理解や協力を求めなかったのだろうか。それが何とも悔やまれる。
PGAツアーへの対抗心を剥き出しにするのではなく、「ゴルフが持つ素晴らしい力を最大限に生かしたい」「リブゴルフはそのためのものだ。そのためにリブゴルフを創設したのだ」と説明していたら、周囲の受け止め方や反応は、まったく異なるものになっていたのかもしれない。
ゴルフ外交を目指すアンバサダーを自負しているわりに、ノーマンは不器用なのかもしれず、不器用な上に頑固で見栄っ張りゆえ、PGAツアーとの対立や周囲との軋轢は、なかなか解消されずにいる。
しかし、昨年の最終戦終了以降、ノーマンの言動は以前より格段に穏やかになり、「大人の対応」を見せ始めたように感じられる。
それを受けて、PGAツアー側も態度を軟化させ、両者が腹を割って話し合いのテーブルに付いてくれたら、そのときこそ「ゴルフの力」が最大化されるのではないか。
そんな期待を膨らませつつ、今後の展開を見守っていきたい。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
01/24 08:32
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