甲子園の名勝負は掘れば掘るほど面白い。私のとっておきは1961年夏の大会、浪商(大阪・現・大体大浪商)対法政二(神奈川)の準決勝だ。まだ野球に関心を持つ以前の子供の頃で実際に見てはいないが、いつか知りたいと思い続けてきた伝説の闘いだ。あれから54年後、高校野球100年の節目にその機会を得た。そして意外な方向に惹(ひ)き込まれていった。
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浪商と法政二は強烈なライバル関係にあった。60年夏からその戦いは始まり、61年春、61年夏まで3季連続で甲子園の舞台で相まみえるのだった。この両者の対戦に勝利をおさめた方が真紅、紫紺の優勝旗を手にした(60年夏・61年春=法政二、61年夏=浪商)。
3大会共に直接対決し、そのステージも不思議に上がっていった。60年夏が2回戦で法政二4-0浪商、61年春は準々決勝で法政二3-1浪商。そして61年夏は準決勝、この試合が球史に残るか否かを決することになる。もしここで浪商が敗れれば史上最高の名勝負としては語り継がれず、究極のライバル校とも捉えられなかったかもしれない。
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