等身大の親しみやすいイメージで人気を博し、ドラマや映画に引っぱりだこの伊藤沙莉さん。新作映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』では、まるで大事な失くし物のように、主人公の記憶に焼きついて離れないヒロインを演じ、新たな一面を見せています。求められる役の幅が広がってきた今、自分の中で変わってきたこと、そしてずっと変わらないことについて聞きました。 【画像】伊藤沙莉インタビュー ──今回のかおりという役は、森山未來さん演じる主人公・佐藤を惹きつけてやまない、自由奔放でキュートな女の子でしたね。伊藤さんの新たな一面を見たような気がして、新鮮でした。 嬉しいです! 私一人の手柄ではなく、本当にスタッフのみなさんのおかげなんですけど、実は試写を観た時に、自分でも「かおりって魅力的だな」って。自分の芝居を客観視してそう感じることって、今まであまりなかったんです。それだけ素敵に映していただけた。これは新しいステージだなと、私自身も実感した役でした。
2020年、46歳の佐藤(森山未來)は、いくつかの再会をきっかけに、かおり(伊藤沙莉)と過ごした90年代の“あの頃”を思い出す。
──以前は、ヒロイン役を演じる時に「自分でいいのか?」とどこか尻込みしてしまうとおっしゃっていましたよね。 それが今回はあまり尻込みしなくて。なぜかというと、かおりは“最愛のブス”だから。キラキラしたヒロインだったら「そこに立つのは私じゃないかな……」って気後れしちゃってたかもしれないけど、かおりは外見どうこうじゃなく、むしろごく普通なのになんでか忘れられないという子で。この“なんでかわからない愛おしさ”みたいなものを任されたのなら、やりたいと思ったんです。それなら出せる気がしたんです、自分の中で。 ──内面的な魅力のあるヒロイン像に、演じたい欲を掻き立てられたんですね。 これまでに演じた恋愛もののヒロインで一番、責任というか重みを感じました。私はよく「普通さがいいね」と言っていただくんですけど、その普通さを武器にして演じることが多いんです。だから今回ほど、他人の人生にまとわりつく役というのは初めてで(笑)。でも、かおりって実は一般的な子だとも思います。若い頃に誰もが通るような道を、普通に通っただけのような気がしていて。 ──出会った頃の佐藤とかおりをつないでいたのは、「普通でいたくない」という感覚でした。そんな二人の気持ちに、伊藤さん自身も共感する部分はありましたか? 「人と同じが嫌だ」という思いはわかりますね。オーディションでも、子役を始めたばかりの頃の私は、癖が強かったと思います。周りが「◯◯事務所から来ました!」と元気にアピールする中、とにかく笑いが取りたくて、一人だけ長州小力さんのモノマネとかしてましたから(笑)。でもある日ふと、「迷惑なことしてるな」と気づいてやめましたけど。 ──審査側からしたら、かなりインパクトがありそうです(笑)。9歳の頃から芝居を始めて、同世代よりも早く大人の世界に飛び込んでいた伊藤さんは、すでに“特別”な存在だった気もしますが。 昔から自分では、とんでもなく普通の人間だと思ってるんです。仕事はみんなと少し違うけど、そもそも「みんなと違うことがしたい」と思って始めたことじゃない。それに9歳からやっていると、ほかの生活を知らないからこれが普通になっちゃう。今もこうしてインタビューしていただいていますが、家に帰って部屋着に着替えたら、もう「私は女優」とか全く思わないんですよ。ほんと、ただの千葉の人なんで(笑)。 ──「自分は特別」という感覚はないんですね。 はい。学生時代は「普通に馴染みたいのに普通が嫌だ」という葛藤がありました。学校のみんなが私のことを「テレビに出ている人だ」と思うから“特別”が出来上がるんだけど、私自身が特別なわけじゃなかったから。“特別”って人が作るもので、自分からなるものじゃないんですよね、多分。 ──伊藤さんは今年、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』のユーモラスなナレーションでも話題に。俳優の仕事にとどまらず、ナレーションや声優の仕事、テレビ番組のMCなど、活躍の幅がどんどん広がり続けていますね。 ここ3~4年の間にいろんなことが、追いつけないくらい目まぐるしく変わっているなって。引き出しをどんどん増やしていかないといけなくて、それに恐怖を感じることもありますが、すごくありがたい毎日だと思っています。 ──環境が変化する中で、自分自身にも何か変わったと思う部分はありますか? サバサバした役が多いので意外に聞こえるかもしれないんですが、私自身は受動的なタイプ。自分から何かを決めることが苦手なんです。0から1を生み出すのは難しいけど、1を100にするという課題に全力で応えることは大好き。お絵描きよりも塗り絵が得意!みたいな感じです。でも最近は、自分で輪郭を築くことも求められるようになってきたので、無理矢理にでも能動的な振る舞いをしなきゃいけない時ってあるなと思っているところです。 ──能動的な振る舞いというのは、たとえば? 今年初めてエッセイを出した時に、編集者さんから「こういう案がありますけど、どれがいいですか?」と選択肢をいただいたことがあって。なかなか決められないので「お任せします!」と答えたいところでしたが、「……いやいや、私の本だしね!」と自分に言い聞かせ、お返事しました。撮影現場でも、演技について「こういう方向もありますよね」とご提案するかたちで意見をお伝えするようにしています。そういう時は受動的でいると、何も始まらないから。 ──エッセイ『【さり】ではなく【さいり】です。』には、「もともと自己肯定感が低かった」と書かれていましたが、コンプレックスや苦手なことはどのように克服していくことが多いですか? 全部、荒療治しています(笑)。自分自身がかけた呪いは、自分でしか解けないと思っていて。たとえば私はこの仕事をしていなかったら、声にコンプレックスを抱くことはなかったと思うんです。だから声のコンプレックスは、仕事で払拭するしかなかった。運よく声を褒めていただく機会が増えてきて、ようやく呪いを解くことができたと感じています。人からかけてもらった言葉が乗り越えるきっかけになることも多いです。 ──逆に後輩から悩みを相談される機会も増えてきたり? 増えてきました、たしかに。みんな私がサバサバしていると勘違いしてるのか、昔からよく相談されるんですよ。前だったら「まぁ、そういうこともあるよね~」ってふわっと答えてましたけど(笑)、最近は映画やドラマからセリフを引用して「そんなふうに考えたら楽かもよ」と伝えてみたり。そういう意味でも、日頃から観るもの触れるものは大切だなと感じていますね。 ■『ボクたちはみんな大人になれなかった』 1995年、ボクは彼女と出会い、生まれて初めて頑張りたいと思った。“普通”が嫌いな彼女に認められたくて、映像業界の末端でがむしゃらに働いた日々。1999年、ノストラダムスの大予言に反して地球は滅亡せず、唯一の心の支えだった彼女はさよならも言わずに去っていった──。 そして2020年。社会と折り合いをつけながら生きてきた46歳のボクは、いくつかのほろ苦い再会をきっかけに、二度と戻らない“あの頃”を思い出す……。 さまざまな世代の心を掴み、絶賛された燃え殻のデビュー小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』。ウェブ連載中からその「エモさ」が話題を呼び、2017年に書籍化されると瞬く間に大ベストセラーとなった半自伝的恋愛小説が、ついに映画化。 原作: 燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮文庫刊) 監督: 森義仁 脚本: 高田亮 出演: 森山未来、伊藤沙莉、萩原聖人、大島優子、東出昌大、SUMIRE、篠原篤 配給: ビターズ・エンド 2021年/日本/124分/カラー 11月5日(金)より、シネマート新宿、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほかロードショー & NETFLIX全世界配信開始! (c)2021 C&I entertainment ■伊藤沙莉 千葉県出身。2003年、ドラマデビュー。2020年、テレビアニメ『映像研には手を出すな!』やドラマ『これは経費で落ちません!』、『ペンション・恋は桃色』などでの活躍を評価され、第57回ギャラクシー賞テレビ部門個人賞、東京ドラマアウォード2020助演女優賞を受賞。2021年は映画『劇場』、『ステップ』、『タイトル、拒絶』、『ホテルローヤル』、『十二単衣を着た悪魔』(すべて20)などにより、第63回ブルーリボン賞助演女優賞、第45回エランドール賞新人賞の栄誉に輝いた。近年の出演作にドラマ『全裸監督』(19、21)、『いいね!光源氏くん』(20、21)、『大豆田とわ子と三人の元夫』(21/ナレーション)、舞台『首切り王子と愚かな女』(21)など。2021年6月に初のフォトエッセイ『【さり】ではなく【さいり】です。』を刊行。2022年は、1月よりドラマ『ミステリという勿れ』が放送開始。また早春に映画『ちょっと思い出しただけ』が公開予定。 —– Photo: Takuya Nagamine Stylist: Akane Yoshida Hair&Makeup: aiko Text: Tomoe Adachi Edit: Milli Kawaguchi グラフィックTシャツ、アシメショートスカート(アンスリード|アンスリード青山店 TEL:03-3409-5503) 中に着たトップス 31900円(アキコアオキ|アキコアオキ TEL:03-5829-6188) イヤーカフス 6600円(ジュエッテ|ジュエッテ TEL:0120-10-6616) スニーカー 13200円(プラス ダイアナ|ダイアナ 原宿店 TEL:03-3478-4001)
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