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“ゲースロ”ファン待望のスピンオフ新シリーズの出来に、原作『氷と炎の歌』作者ジョージ・R・R・マーティンも満足。#ゲースロ #ゲームオブスローンズ #GOT
エログロにまみれながらも緻密なキャラクター設定と豪華なセット、そしてハイクオリティのCGを駆使し、普遍的な人間の欲望と愛情を描き出す…。その上で、国同士が争っている間に別の脅威に晒(さら)されるという予言的なプロットによって、ジェンダーや国を問わず大ヒット。エミー賞、ゴールデングローブ賞をはじめ錚々(そうそう)たるアワードを席巻した時代を代表するドラマ・シリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ(GOT)」のスピンオフドラマがついに、2022年8月22日(月)から日米同時配信されます。
2019年5月19日に物語の最終的なヒロイン、デナーリス・“ドラゴンの母”・ターガリエンが、“鉄の玉座”と真の女王の座を目前に悲劇的な結末を迎えてから3年…。何度も浮かんでは消えていった、スピンオフのアイデアの中から唯一生き残った「ゲーム・オブ・スローンズ」前日譚本編の予告編がこのたび、2022年7月21日~同月24日まで開催されていたサンディエゴ・コミコン・インターナショナル(SDCC=San Diego Comic-Con International)で公開されました。
この予告編では戦闘、王都、空飛ぶドラゴンなどの素晴らしいショットが登場し、シリーズの中心となる鉄の玉座の後継者争い、すなわちレイニラ・ターガリエン王女とデイモン・ターガリエン王子の間で繰り広げられる戦いを予告しています。
保守主義者たちは女性が鉄の玉座につくことに抵抗し、レイニラは自分のドラゴンの背中から「新しい秩序」を創り出すことに執念を燃やしています。一方、スターク家、ヴェラリオン家、ラニスター家、バラシオン家の人々は絶対権力に対して陰謀を企てるものの、ターガリアン家は比類なきドラゴンという絶対的武力を有しているため、成功するまでに至りません。
それでは上記、2022年のサンディエゴ・コミコンの中でも最高峰の盛り上がりを見せた、6500人収容のメインホールである「ホールH」で行われた「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン(HOUSE OF THE DRAGON)」のパネルで語られたことも含め、この番組についてこれまでに判明していることをここでご確認ください。
土曜日に展開された「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」のパネルは、トレーラーで幕を開けました。そこには鉄の玉座を巡る(当時)最新かつ最大の戦い、番組の中心での後継者争いの長いティース、そして「ドラゴンたちがひとつになって統治していた時代」の様子などが描かれます。
これには、そう、瞬きしたら見逃してしまうくらいのドラゴンのチラ見せも含まれていました。パネルそのものは、マット・スミス、スティーブ・トゥーサン、オリビア・クックの3人がシリーズの制作について、ネタばれをしない程度に会話を続けています。もちろん、原作者にして製作総指揮を務めるジョージ・R・R・マーティンも登場し、「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」の10エピソードのうち9エピソードをすでに見たことを明かしました。そして気になる感想は、「とても満足している」とのこと…。
ちなみに「キャストで誰が一番ヴァリリア語(※)を話せるか?」という話題となったとき、その解答は「レイニラ・ターガリエンの幼少期を演じるミリー・アルコックだ」ということです。
※実際には存在しない劇中だけの言語ではあるものの、ドラマのために言語学者によって緻密につくり出されたもの。「“ゲースロ(GOT)”のキャストは、実際の言語同様に学習しなければならなかった」とエミリア・クラークが語っています。ページ下部の映像1:55~デナーリスが“ヴァリリア語”を話します。[2022.8.1 13:00追記]
日本での配信はアメリカと同時。「世界最速」となる日本時間8月22日(月)に、U-Nextのみで配信されます。その後毎週1話ずつ公開となります。
このキャラは生き残るだろう…という期待を裏切るように、登場人物が次々に死んでいくため、「ゲーム・オブ・スローンズ」ファンの間では“推し”をつくらないで鑑賞することが常識でした。原作者マーティンも10話中9話を見終えた上で、「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」のお気に入りはいないと語り、『The Hollywood Reporter』誌に対しては「パワフルで直感的で、暗くて、シェイクスピアの悲劇のような作品です。アリア(・スターク)のような、誰もが好きになるキャラクターはいない。みんな欠点だらけ…みんな人間さ。いいこともするし、悪いこともする。権力欲や嫉妬、古傷に駆られる…まさに人間そのもの、私が書いたとおりにね」と述べています。とは言え、これらの新キャラクターはかなり面白そう。公式のプレス資料では、HBOは彼らを次のように説明しています。
王女。ヴィセーリス王の第1子にして純粋なヴァリリアの血を引くドラゴンライダー。王位継承権を持つが、彼女は男ではなかった…。
王子。ヴィセーリス王の弟。王位継承権を持つ比類なき戦士にしてドラゴンライダーである反面、気性が荒い。一家の危険分子。
ウェスタロス大陸の諸侯によって選ばれた王。平和な統治を望んでいるが、善人が必ずしも偉大な王になるとは限らない…。
王と王国に忠実に仕える“王の手”。王の弟デイモンの存在が、王国に対する最大の脅威と考えている。
“王の手”オットーの娘。七王国一の美女で、王やその側近たちに囲まれて育った彼女は、政治的洞察力も鋭い。
“海蛇”の異名を持つ、ウェスタロス史上最も有名な海洋冒険家。世界最大の海軍と財力を有し、ターガリエン家と同じ古代ヴァリリアの血を引く。
コアリーズの妻で、ドラゴンライダー。女性であるという理由だけで、従兄弟のヴィセーリスに王位を奪われた“存在しない女王”。
奴隷として何度も売られ、不遇な人生を送っていた。だが、デイモンが最も信頼する存在にまで上り詰める。
生まれも称号もない平⺠だが、道義心と卓越した剣の腕を持つ騎士。ドーン人の血を引く。
ミゲル・サポチニクとライアン・コンダルがショーランナー(制作現場の最高責任者)を務め、マーティン、サラ・ヘス、ジョスリン・ディアス、ヴィンス・ジェラルディス、ロン・シュミットが製作総指揮を務める予定。「ゲーム・オブ・スローンズ」のオリジナル脚本家であるD.B.ワイスとデヴィッド・ベニオフがクレジットに名を連ねることは、今のところない様子。音楽は「ゲーム・オブ・スローンズ」と「ウエストワールド」の作曲家ラミン・ジャワディが、再びこのシリーズの音楽を担当する予定です。
マーティンが執筆した、ターガリエン家の歴史を描く『炎と血(Fire & Blood) 』(『氷と炎の歌』シリーズの外伝)を基にした「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」は、「ゲーム・オブ・スローンズ」の出来事の200年前が舞台となります。
『竜との舞踏』として知られる同シリーズ5作目に書かれた、ウェスタロスの歴史に残る悪名高い出来事に焦点を当てる予定。これは父ヴィセーリス1世の死後、王位をめぐってエイゴン2世とレイニラ兄弟の間で起こった内戦です。
この戦争はウェスタロス全体を敵に回し、スタークやラニスターといった他の家もどちらかの側につかねばなりませんでした。そのせいでターガリエン家の強力なドラゴンの多くは滅び、デナーリス・ターガリエンが200年後に3つの卵を孵化させるまで絶滅してしまいました。
「この物語の中で生きている誰もが、戦争や意味のある争いを見た経験がありません」と、コンダルは「EW」に語っています。さらに、「私たちも小競り合いや馬上試合はあっても、権力闘争を基盤にしたこの社会に生きています。私たちはすべての人が生まれたときから、戦いのために訓練される時代を見ることになります。が、戦闘は起こりません。(訓練されているのに発揮する場所がないので)そこで溜め込んだエネルギーが隙間から漏れてしまい、自分自身を消耗し始め、全体が沸騰し吹きこぼれてしまわないように戦争という解放が必要になっていきます」とのこと。
「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」の予告編では、GOT スタイルの古典的な剣術、馬上槍試合、長い廊下を劇的に駆け抜けるアクションの断片も垣間見ることができます。
「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」が異なる意図を持つ前日譚であっても、クリエイティブ・チームは「ゲーム・オブ・スローンズ」の世界観を感じられるようにしたいと考えているようです。
サポチニクは、『The Hollywood Reporter』はこう語っています。
「私たちは『ゲーム・オブ・スローンズ』が何だったのか?を非常に尊重しています。原作が壊れていないので、車輪(※)をつくり直そうとはしていません。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』には独自のトーンがあり、それは番組の中で進化して現れてくるでしょう。ですがその前に、かなり画期的だったオリジナル・シリーズに敬意を払い、オマージュを捧げることも非常に重要です。あの番組があったからこそ、私たちはここにいるのです」。
※GOT後半は、デナーリスが再生産される階級や支配システムを壊すべく放った「車輪を壊せ(Break the wheel)」がキーワードに。これにかけた表現。下の映像2:30~“車輪の輻”について語るシーン。[2022.8.1 13:00追記]
自分たちのルーツに敬意を表したいとは言え、「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」チームは「ゲーム・オブ・スローンズ」のコピー版を製作しようとはしていません。これはファンにとって朗報で、似たようなものでありながら新しい驚きを期待できます。
「とは言え、”Thrones(王座・王位)” をつくったときはこうだった…とは言えません」と、サポチニクは続けます。「すべての文脈をそれで始めてしまっては、元も子もありません。これは別のものであり、別のものであるべきなのです。違うスタッフ、違う人、違うトーン。願わくば、別のものとして見てもらいたい。ですが、それは一朝一夕にできることではありません。原作に近づけることができれば、幸運なことです。ですから私たちは、ただ頭を下げて製作に取り組み、でき上がったものが『ゲーム・オブ・スローンズ』のタイトルにふさわしいものであることを願っています」。
「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」の制作陣は、「ゲーム・オブ・スローンズ」の原罪、すなわち多様性の欠如と女性キャラクターの粗雑な扱いを正そうとしています。「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」では、強力なヴェラリオン一族を、流れるような銀色のドレッドヘアが特徴の裕福な黒人支配者として再構築しています。
コンダルによると、マーティンはこのシリーズを書きながら、ヴェラリオン家を西の果てからウェスタロスにやってきた黒人の征服者と想定して、この描写を自由に創造しました。
「ミゲルと私にとって、白人の集団が登場するのではない番組をつくることがとても重要でした。とは言え、それが後付けであったり、もっとひどい場合は、形骸化してしまうようなやり方はしたくありませんでした」と、コンダルは語ります。
事実上、家父長制、何百年も何百年も続いてきたこのシステムへの幻滅を描いている。
GOT史上初めて、女性キャラクターが最前線に立ち、物語はジェンダーの不公平に真っ向から立ち向かう予定です。予告編ではレイニス・ターガリエン王女が姪のレイニラ王女に向かって、「男たちは領土を灰にしてでも、女に玉座は譲るまい」と言っています。レイニスを演じるイブ・ベストは、この番組について「事実上、家父長制、何百年も何百年も続いてきたこのシステムへの幻滅を描いています」と語っています。
「ゲーム・オブ・スローンズ」は常にその驚くべき製作費で知られていますが、「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」は新しい技術でその製作を次のレベルへと引き上げる構えです(『Variety』誌は1話あたりの製作費を、2000万ドルと見積もっています)。この前日譚では、仮想洞窟のセットの画像に例示されているように新しい仮想空間制作の技術を使用して、そのシーンに最適な設定を作成する予定です。スタッフから流出した撮影現場の写真(Redditで閲覧可能)からも、バーチャル・ステージの様子を垣間見ることができます。
When it comes to storytelling, leaning into the future is a ton of fun. One example is this massive virtual production stage we created earlier this yr at @WBSLeavesden lot outside London. Game of Thrones: House of the Dragon currently uses this amazing tech. A game changer. 🎬 pic.twitter.com/6A0S27JV3O
「ゲーム・オブ・スローンズ」のOGキャストにとっても、慣れ親しんだものからの離脱はほろ苦いものです。このドラマで一気にスターになり終了後精神的健康のために療養に入ったジョン・スノウ役のキット・ハリントンは、FOMO(fear of missing out=自分がいない場所で他人がいい体験をしていると恐れること)を感じるには十分なほど似たようなトーンになるだろうと指摘します。
「私たちが何年も着ていたものに似た服や衣装を着て、同じ音楽やスタイル、トーンになるのに、その中にいないなんて…割り切れない思いが出てくると思う」と、ハリントンは「Insider」に語っているます。「もちろん僕はそれを見るつもりだし、番組を指揮するミゲル(・サポチニク)を応援するつもりだ。彼らの幸せを願っているけど、僕の心に近い、あの物語だから、もちろんそこには少しの痛みもあるかもしれない」。
一方でティリオン・ラニスターを演じゴールデン・グローブ賞を受賞したピーター・ディンクレイジは、観客として腰を据えて「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」を体験できることを喜んでいるようです。
「“スローンズ”を再現しようとしないことがコツだと思う 」と、ディンクレイジは言います。「インディペンデント」紙で彼は、「再現しようとすると、金儲けのように感じてしまう。多くの続編では、1作目が大金を稼いだからという理由でやるから、パワーがなくなってしまうんだ。でも、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は次に何が起こるかわからない、純粋に一視聴者としてワクワクしながら観ています』。
ジェイミー・ラニスターを演じたニコライ・コスター=ワルドーは、「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」には労力が必要と思っているようです:
「ゲーム・オブ・スローンズ」がヒットするいなやHBOのクリエイターは、マーティンのIP(intellectual property=原作などの知的財産)に群がりました。2021年のノンフィクション本『Tinderbox: HBO’s Ruthless Pursuit of New Frontiers』の中でこう語っています。
マーティンが『竜との舞踏』のアイデアと言ったものが、現在では「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」であることが分かっています。『ダンクとエッグの物語』のアイデアとは、同作を原作にした進行中の多くのスピンオフドラマのひとつです。
さて、マーティンは自身のブログで、多くのスピンオフについて最新情報を提供しました。「ローマ」のショーランナー、ブルーノ・ヘラーは現在、七王国の偉大な船乗り、コアリーズ・ヴェラリオンを描くドラマ「The Sea Snake(旧名Nine Voyages)」のパイロット版を執筆中です。
戦士の女王ナイメリアを描く「Ten Thousand Ships」は、アマンダ・シーゲルをショーランナーに迎えて進行中。シーゲルは「数本のドラフト脚本を提出した」と、マーティンは報告しています。マーティンによると、クリエイターたちは『七王国の騎士(A Knight of the Seven Kingdoms)』」(『ダンクとエッグの物語』シリーズの3中編<草臥しの騎士、誓約の剣、謎の騎士>を収録)と『草臥しの騎士(放浪の騎士 七つの王国の物語)』の2つの映像化を別々に企画しているそうです(マーティンは、シーズン1が同名の小説の映画化になることを確認しているので、『The Hedge Knight」は理にかなっていると言えるでしょう)。
アニメシリーズ(マーティンはHBOではなく、HBO Maxで放映されると明かしています)については、オリジナルのテレビシリーズでは登場しなかった「イー・ティの黄金帝国(単にイー・ティとも呼ばれる)」が舞台。エッソス大陸の既知の世界の南東部近くに位置するイー・ティは、マーティンのファンタジー・サンドボックスの中で最も古く、最も進んだ領域のひとつと考えられています。
中国帝国にインスパイアされたこの地域は、テレビ番組ではヴァリス卿が有名なイー・ティに航海したときに、ほんの少し言及されただけでした。この地域は「黄金帝国」と呼ばれることになるとマーティンは明かしています。
マーティンが「ゲーム・オブ・スローンズ」の小説『氷と炎の歌』を書き上げながら、このようなスピンオフ作品に取り組む時間をいつ見つけるのかと不思議に思っているのは、皆さんだけではありません。実際に著者は、これについて訊かれると少し不機嫌になってしまいます。
「そう、もちろん私はまだ『The Winds of Winter』を執筆中」とマーティンは自身のブログに書き込みました。「そのことは100の場で100回話した。それを延々と話し続けるのは疲れるだけ」とも。小説を書き上げ、長老のように映画化を仕切りながら、著者はさらに自分の過去の作品についても考えているようです。
「ときどき私は、このシナリオ全体の中で一体何者なのか考えようと座っているんだ」と彼は、新しいインタビューで語っています。「私はジョージ・ルーカスなのか? 私はジーン・ロッデンベリーか? スタン・リーなのか? 私はこの作品にどう関われるのか? そうだなぁ、最後のスタン・リーではないな。彼には権力も影響力もなかった。ストーリーを書いていたわけでもないし…。『このキャラクターはやめとけ』とも言えなかっただろうし。彼はただコンベンションに連れてこられたり、カメオ出演したりするフレンドリーな人だったんだ。でも自分がつくった世界やキャラクターから見放されるのは、つらいことだよ」と言います。
HBO、聞いてます? どんなに忙しくてもマーティンは、自分の作品を勝手に映像化されることなど許可しません。静かに眠りにつくことなどないのです。
ゲーム・オブ・スローンズ厨(ちゅう)の皆さん、期待することはたくさんあります。続報が入り次第、このページでお知らせします。
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』(原題:House of the Dragon)全10話
【配信開始日】8月22日(月)第1話配信予定(毎週1話ずつ配信) ※日本時間
From Esquire US
※この記事は抄訳です